海外営業目指して新卒でメーカーに就職するのはやめたほうが良いよ

「グローバルで働きたいです!」

「世界に日本の技術を広めたいんです!」

「駐在員になると給料高くなるんですよね?」

なのでメーカーで海外営業やりたいです!という学生さん結構多いのではないでしょうか。私も、よく社員訪問を受けるのですが、みなさん目をキラキラさせながら質問してくれます。当方は、日系大手メーカーで4年間海外営業をしてました。その経験から回答させていただくと、海外営業目指して新卒でメーカーに就職するのはやめたほうがよいです。

なぜなら、仕事が面白い・面白くないは置いておいて、そもそも海外営業へ配属されることがほとんどないからです。面接で海外への熱い想いを語って、面接官から期待の言葉とともに内定をもらっても、残念ながら95%以上の確率で日本国内市場担当の配属となります。以下3つの理由で、海外営業のポジション数が少なく、新人に割り当てられにくいからです。

1. 日本国内市場要因として人が必要なため

グローバル化だ・海外進出だ・国内市場の縮小だ、と言ってもほとんどの日系メーカーの主戦場はまだまだ日本国内市場です。国内市場と海外市場を比較した場合、国内市場の売上のほうが大きいです。売上が大きいということは、組織も大きいです。組織が大きいということは、その分、人が必要になります。なので、国内チームに多くの人数が配属されることになります。そもそも、物理的に海外営業のポジション数が少ないので、配属率が低くなります。

 

2. 海外営業が必要になってもまずは国内営業の先輩が異動する

いやいや志望している会社の人事から「海外事業を積極的に拡大していて、海外営業も足りず人をどんどん増やしている」と聞いた!という方もおられると思います。ただ、この場合でも新人を配属させるという場合は少ないです。基本的にメーカーの海外ビジネスは進出国に現地法人なり代理店を設けて、そこに日々のオペレーションを回してもらうようにしています。なので、どこかの国に初めて進出してオペレーションを立ち上げるタイミングでは、オペレーション・スキルの移植、また現地従業員の監督係として、日本の海外営業が必要になります。そして、積極的に新規海外進出する場合、確かに海外営業が必要になるのですが、基本的に社内の国内営業やっていた人が異動します。新人が割り当てられるわけではありません。理由は2つ。1つ目は、現地に社内のオペレーション・スキルを移植、監督係となるというミッション上、既にオペレーション・スキルを習熟し、社内で顔がきく人間でないとミッションをこなせない為。2つ目は、社内政治要素ですが、社内で海外営業への順番待ちしている先輩がたくさんいる為。上でも書きましたが、海外営業のポジション数は少なく、かつ日系企業は人がやめないため、なかなか海外営業のポジションは空きません。なので、現在国内営業されている先輩たちは海外営業への異動を希望しても、上司から「もう少し経験してから」と言ってお茶を濁され続けて、渋々順番待ちしています。そんな中で、新人がバンバン配属されてしまったら、その先輩方から暴動が起きてしまいます。社内の秩序を守るためにも、新人を人気ポジションの海外営業に配属させるわけにはいかず、順番待ちで先頭にいる社員を異動させる必要があります。

3. 海外営業がいらない仕組みが既に出来上がっているから

国内市場より海外市場からの売上が大きい会社だったら、人が必要なのでは?と思われる方もいると思います。残念ながら、この場合が一番海外営業がいりません。現地でのビジネスが立ち上がってくると、現地の人でオペレーションが回るようにしていきます。その過程で、日本人は高コストなので撤退していき、日本からサポートする役目に回ります。海外市場からの安定した売上があるということは、それだけ、現地だけで完結する強固なオペレーション(現地法人とそれをサポートする日本の体制)が既に確立しています。市場が伸びているから営業員が必要となっても、それは現地でお客さんと接する現地営業員であり、それを後方支援する日本の海外営業ではありません。日本の海外営業は既に半間接部門になっているので、増員するとコスト増です。そのため、既存の海外営業員も削減の対象になるので、まして新人はいりません。蛇足ですが、万が一この状態の会社の海外営業になれるとしてもおすすめしません。オペレーションが確立しているため、決まり決まった作業を淡々とこなす経験しかできないからです。楽は楽なのですが、裁量などは全くないため、ダイナミックな経験は積めません。そして、往々にして日本本社より現地法人の力が強くなっているので、せっかく本社にいるのに現地のパシリにされてしまいます。

ここら辺の内情を企業の人事は絶対に話してくれません。人事は往々にして使いこなせるかは一旦置いておいて、最大限優秀な人を採用したがります。ちなみに、英語力というのは昨今「優秀な人」を図る重要なバラメーターになっているため、英語力のある海外志望の学生さんからすると余計にタチが悪いです。私も、人事から経営陣への採用状況を報告した資料を見ますが、「内定者のTOEIC平均点○○、英語Webテスト平均点○○。昨年より○%上昇」って感じでアピールしています。それが、人事の評価となります。採用した人を希望通りの部署にどれだけ配属させたか、みたいな就活生が気になる点は一切社内で報告されません。人事からすると、事後処理扱いで、経営陣も興味ないです。実際、上司も先輩もずっと国内営業をしてきて、海外との仕事なんか全くありませんっていう超ドメスティック部署にTOEIC900点超えの新人を配属するなんていう超ミスマッチなことが起きています。

夢も希望もない話を書いてしまいましたが、これが現実です。就活生の皆さんはぜひ見極めてください。